Culture

ソラギツネの新月通信/
『長い旅の途上』(星野道夫)

今夜の一冊は写真家、星野道夫のエッセイ集『長い旅の途上』
星野道夫さんが事故で亡くなった後に単行本未収録の文章をあつめて出版された遺稿集です。そこに繰り返し現れるのは、同時に存在する二つの空間のイメージでした。

Photo: 宙フェス夜市編集部

Text: 宙フェス夜市編集部

ソラギツネの新月通信/<br>『長い旅の途上』(星野道夫)

ソラギツネ

はるかな自然を 心の中に住まわせること…

今夜の一冊は写真家、星野道夫のエッセイ集『長い旅の途上』です。

カムチャッカ半島でのヒグマの事故により星野道夫さんが亡くなったのは1996年。この本はその4年後に単行本未収録の文章をあつめて出版された遺稿集です。

そのように作られた本なので、この本を読んでいると、アラスカに憧れ、アラスカを旅して回り、そこに根を張って生きた星野道夫という人のとぎれとぎれの日記を読んでいるような、ダイジェスト映像を見ているような気分になります。

そこに繰り返し現れるのは、同時に存在する二つの空間のイメージです。

“私が東京で暮らしている同じ瞬間に、同じ日本でヒグマが生き、呼吸をしている......”

“東京で忙しい日々を送っているその時、アラスカの海でクジラが飛び上がっているかもしれない”


「目の前にあるものとは違う、はるか遠い自然がいつでも同時にある」というこのイメージは私たちにとてつもない勇気を与えてくれます。今、目の前にあるものをしっかりと見据えることができるようになり、立ち向かう気力が湧いてきます。

もしかすると、
都市で生活するようになった現代の人にとって、「はるかな自然を心の中に住まわせること」は生きていくための術なのかもしれません。魚が陸に上がる時、体の中に海を内包したように。一つの進化なのかもしれません。

貴方が心に住まわせているのは、どんな風景ですか?

長い旅の途上

Information

『長い旅の途上』

[著]星野道夫 ‎文藝春秋(1999/5/10

ソラギツネの新月通信/『長い旅の途上』(星野道夫)

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